HOW TO VERIFY
インクの安全性を、
自分で見分ける手順
「ビーガン」「オーガニック」「安全」といった言葉ではなく、文書と番号で確かめます。受ける人は施術前に、アーティストは仕入れのときに使えます。
SDSを読む
メーカーがバッチ別に出す安全データシートを取り寄せ、REACH附属書XVIIへの準拠表明・全成分・CMR物質の不含が書かれているかを見る。出せないメーカーの製品は安全要件を満たさないとみなす。
CI番号を点検する
ラベルのCI(カラーインデックス)番号を確認。CI 74160(Pigment Blue 15:3)と CI 74260(Pigment Green 7)は2023年1月以降EU不可。アゾ系の Orange 13・Yellow 14 なども不可。
第三者データベースで照合する
ドイツのCTL GmbH Bielefeld(タトゥー/PMUのREACH検査に特化した試験所)の公開DBや、ECHAの物質データベースでブランド名・色名・製品番号を照合する。
ラベルの必須表示を見る
「Mixture for use in tattoos or permanent make-up」の文言、バッチ番号、ニッケル/六価クロム含有時の警告文が入っているか。小さな容器は使用説明書に記載されることもある。
正規の流通から買う
SDSや適合宣言書を求めに応じて出せる正規ルートで仕入れる。偽造品や保管の悪い非正規ルートは、どんな判定法も意味をなさない。
出典:SDS・ラベル要件[1][15]/CI番号と禁止顔料[1][2]/第三者DB[9][10]。
READING AN SDS / 実例
SDSを一行ずつ読み解いてみる
実例として、ある「消えるインク(made-to-fade)」の黒のSDSを読み解きます。面白いのは、この黒に「黒い顔料(カーボンブラック)」が入っていないこと。赤や緑など色のついた有機色素を混ぜて、黒く見せています。
水
インクの土台になる溶媒。いちばん多くを占める成分です。
リコピン(CI 75125)
トマトやスイカを赤くする天然のカロテノイド色素。発色を担う赤の一つ。
レッド195(ソルベントレッド195)
発色を担う赤の有機色素。
グリセリン
うるおいを保つ保湿成分。化粧品や食品にも広く使われています。
グリーン3(D&C Green No.6)
緑の有機色素。米国で外用の医薬品・化粧品にも使われる色です。
イソプロピルアルコール(ごく少量)
製造・品質管理を助けるアルコール。引火しやすいのは容器・保管上の性質で、皮膚そのもののリスクではありません。
レッド23(ソルベントレッド23)
赤〜橙の有機色素(アゾ系)。
| SDSの表記 | 正体・はたらき |
|---|---|
| 水 | インクの土台になる溶媒。いちばん多くを占める成分です。 |
| リコピン(CI 75125) | トマトやスイカを赤くする天然のカロテノイド色素。発色を担う赤の一つ。 |
| レッド195(ソルベントレッド195) | 発色を担う赤の有機色素。 |
| グリセリン | うるおいを保つ保湿成分。化粧品や食品にも広く使われています。 |
| グリーン3(D&C Green No.6) | 緑の有機色素。米国で外用の医薬品・化粧品にも使われる色です。 |
| イソプロピルアルコール(ごく少量) | 製造・品質管理を助けるアルコール。引火しやすいのは容器・保管上の性質で、皮膚そのもののリスクではありません。 |
| レッド23(ソルベントレッド23) | 赤〜橙の有機色素(アゾ系)。 |
正直に読む①
重金属(鉛・水銀など)を主成分にしない設計。黒の正体は炭素のかたまりではなく、分解されやすい有機色素です。
正直に読む②
ごく少量のイソプロピルアルコールが「引火性」と分類されますが、これは容器・保管上の性質。皮膚に対する危険度ではありません。
正直に読む③
「軽度の皮膚刺激(区分3)」など弱い分類が付くことはあります。隠さず読み、強い分類(発がん性など)がないかをこそ確認します。
※ これは黒インクのSDSにもとづく内訳の一例で、配合は色(黒・赤・青)ごとに異なります。数値は幅をもたせた申告レンジで、実処方そのものではありません。出典:当該メーカー公式[20]。
PUBLIC SDS / 読み比べ
公開 SDS を読み比べる
メーカーが公開している SDS を実際に取得して読み、要点を整理しました。各文書の詳しい転記(組成表・ばく露防止・法規制情報など)は、ブランド別ページの「公開 SDS の要約」にあります。
Union Black(UNB)
- 書式
- GHS 16項目(OSHA・WHMIS …
- 発行・改訂
- 発行 2022-04-13 / 改訂 New(初版)
- 第2項の分類
- 分類あり
- EU 不可顔料
- なし
- REACH 言及
- あり
- 取得元
- 原文
Triple Black(SDS 上の名称は TATTOO PAINT No. TBK)
- 書式
- GHS 16項目(12ページ)。Revi…
- 発行・改訂
- 発行 2001-04-12 / 改訂 2022-04-04(2017年に旧 MSDS から GHS 形式へ変換)
- 第2項の分類
- 分類あり
- EU 不可顔料
- なし
- REACH 言及
- なし
- 取得元
- 原文
Black 系 11 品番(Lining Black、Triple Black、Maxx Black など)を 1 枚で
- 書式
- 16項目(第12〜16項は non-ma…
- 発行・改訂
- 発行 2022-11-05 / 改訂 2024-06-19
- 第2項の分類
- 分類なし
- EU 不可顔料
- なし
- REACH 言及
- なし
- 取得元
- 原文
Red 系 24 品番(Ruby Red、Crimson Red、Lipstick Red など)を 1 枚で
- 書式
- 16項目(6ページ)
- 発行・改訂
- 発行 2022-11-05 / 改訂 2024-06-19
- 第2項の分類
- 分類なし
- EU 不可顔料
- あり
- REACH 言及
- なし
- 取得元
- 原文
全色共通の 1 枚(Material Safety Data Sheet Solid Ink)
- 書式
- 旧 MSDS の並び(1 会社情報、2 …
- 発行・改訂
- 記載なし
- 第2項の分類
- 分類なし
- EU 不可顔料
- あり
- REACH 言及
- なし
- 取得元
- 原文
Golden Gate(クラシックラインの 1 色・2019 年版)
- 書式
- 「SAFETY DATA SHEET (…
- 発行・改訂
- 改訂 Rev. 0: 2019-02-10
- 第2項の分類
- 分類なし
- EU 不可顔料
- なし
- REACH 言及
- あり
- 取得元
- 原文
Zuper Black(Rev. 3.5)
- 書式
- GHS 16項目。OSHA HCS 20…
- 発行・改訂
- 改訂 2025-02-18
- 第2項の分類
- 分類なし
- EU 不可顔料
- なし
- REACH 言及
- なし
- 取得元
- 原文
| ブランド | 対象製品 | 書式 | 発行・改訂 | 第2項の分類 | EU 不可顔料 | REACH 言及 | 取得元 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Dynamic Color | Union Black(UNB) | GHS 16項目(OSHA・WHMIS … | 発行 2022-04-13 / 改訂 New(初版) | 分類あり | なし | あり | 原文 |
| Dynamic Color | Triple Black(SDS 上の名称は TATTOO PAINT No. TBK) | GHS 16項目(12ページ)。Revi… | 発行 2001-04-12 / 改訂 2022-04-04(2017年に旧 MSDS から GHS 形式へ変換) | 分類あり | なし | なし | 原文 |
| Eternal Ink | Black 系 11 品番(Lining Black、Triple Black、Maxx Black など)を 1 枚で | 16項目(第12〜16項は non-ma… | 発行 2022-11-05 / 改訂 2024-06-19 | 分類なし | なし | なし | 原文 |
| Eternal Ink | Red 系 24 品番(Ruby Red、Crimson Red、Lipstick Red など)を 1 枚で | 16項目(6ページ) | 発行 2022-11-05 / 改訂 2024-06-19 | 分類なし | あり | なし | 原文 |
| Solid Ink | 全色共通の 1 枚(Material Safety Data Sheet Solid Ink) | 旧 MSDS の並び(1 会社情報、2 … | 記載なし | 分類なし | あり | なし | 原文 |
| World Famous Tattoo Ink | Golden Gate(クラシックラインの 1 色・2019 年版) | 「SAFETY DATA SHEET (… | 改訂 Rev. 0: 2019-02-10 | 分類なし | なし | あり | 原文 |
| Intenze | Zuper Black(Rev. 3.5) | GHS 16項目。OSHA HCS 20… | 改訂 2025-02-18 | 分類なし | なし | なし | 原文 |
| Intenze | True Blue(標準ライン・Rev. 3) | GHS 16項目(OSHA HCS 20… | 改訂 2025-02-17 | 分類なし | あり | なし | 原文 |
(EU) 2020/2081 の規則番号に触れている SDS は、ここで読んだ 8 本には 1 本もありませんでした(2026-08-23 時点)。REACH 対応の宣言は SDS ではなく別の証明書や製品ページに書かれていることが多く、SDS だけで適合は判断できません。
監修・更新情報
公開:2026.06.10 / 最終更新:2026.06.10
※ 本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、特定製品の安全性を保証・否定するものではありません。「REACH適合」はメーカーの自己宣言であり、適合状況・製品ラインは随時変わります。最終的な判断は、SDS・第三者検査・正規の流通元の情報にもとづいてご確認ください。
参考文献・出典
情報基準日 2026年6月8日。一次資料・査読論文・公的資料を優先し、メーカー/小売の表示には自己宣言である旨を付しています。
出典を表示(全34件)
- [1]Commission Regulation (EU) 2020/2081(REACH附属書XVII エントリー75を新設。タトゥーインク・永久化粧の制限), EUR-Lex CELEX:32020R2081 リンク
- [2]ECHA「REACH restriction of hazardous substances in tattoo inks and permanent make-up」(エントリー75が4,000超の有害物質を制限) リンク
- [3]Moseman, Noble, Sanders, Guo, Swierk「Analysis of blue and green REACH compliant tattoo inks」Analyst 2024;149(21):5329-5335(DOI:10.1039/d4an00793j)。適合表示の青緑10検体中9検体が非適合・4検体に禁止物質 リンク
- [4]Nordic Council of Ministers『Joint Control of Tattoo Inks』TemaNord 2024:549。211インクで表示適合8%・完全適合7%※ 北欧当局の共同監視報告。
- [5]EU Safety Gate(旧RAPEX)警告 A12/01329/23(チェコ通報、2023)。Dynamic「Viking」ダークグリーンに鉛最大25%、市場回収※ 一次通報。二次情報では対象色の記載に食い違いがあるため一次情報を採用。
- [6]Swierk研究チームの米国先行調査(Chemistry World 2024 が報道)。9社54検体中45検体で成分とラベルが不一致※ 二次報道。
- [7]厚生労働省「タトゥー施術行為に使用されることが目的とされている機械器具について」(令和4年4月28日 薬生監麻発0428第1号)。タトゥー施術にのみ使う針及びマシン等は薬機法上の医療機器に該当しないと解する、との通知(インクは通知の対象に挙げられていない) リンク
- [8]最高裁判所第二小法廷 令和2年9月16日決定(平成30年(あ)1790号 医師法違反被告事件)。タトゥー施術は医師法第17条の「医行為」に当たらないとして検察側上告を棄却 リンク
- [9]ECHA CHEM「Substances in tattoo inks and permanent make up」(物質データベース) リンク
- [10]CTL GmbH Bielefeld「REACH-compliant tattoo & PMU database」(第三者試験所の検査データベース) リンク
- [11]「Occurrence and Regulatory Evaluation of Contaminants in Tattoo Inks」Cosmetics 2023, 10(5):141, MDPI(汚染物質と規制評価) リンク
- [12]「Heavy Metal Content in Tattoo and Permanent Makeup Inks and European Standards—Is There Still a Health Risk?」PMC(REACH施行後も限界値超過の製品が流通) リンク
- [13]「Toxic metals and carcinogens found in Australian tattoo inks」The BMJ(市販インクからの重金属・発がん物質の検出) リンク
- [14]IARC(国際がん研究機関)TATTOOING ナレッジベース(背景情報) リンク
- [15]EuPIA「Information Note: Tattoo Inks – Restriction under REACH」(表示要件・濃度上限の整理) リンク
- [16]Intenze「Understanding REACH Compliance in the Tattoo Industry」/Gen-Z(自己宣言の適合ライン) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [17]World Famous Tattoo Ink「Limitless」REACH Compliant Pigments リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [18]REBEL「MoCRA & REACH Compliance Tattoo Ink」(CTL検査・2023年1月のREACH認証取得と表示) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [19]Killer Ink「EU REACH Compliant Tattoo Ink」/Nordic Tattoo Supplies「REACH Database」(EU小売の適合カテゴリ集約) リンク※ 小売の集約。適合は各社の自己宣言にもとづく。
- [20]Ephemeral Tattoo「How Ephemeral Ink Works」「FAQ」(欧州向けはREACH適合・重金属不使用・ビーガンと表示) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [21]U.S. FDA「Tattoos & Permanent Makeup: Fact Sheet」。注入用に承認された色素はなく、未承認色素を使えばインクは不良品(adulterated)。工業用顔料の転用にも言及 リンク
- [22]U.S. FDA「FDA Issues Draft Guidance on Tattoo Inks」(MoCRAに基づく不衛生条件のドラフトガイダンス。当面は微生物汚染が主眼) リンク
- [23]「Recalls of tattoo and permanent makeup inks in the United States…」PMC。2003〜2023年に18件の汚染リコール、密封インク調査で49%が微生物汚染 リンク
- [24]「The pressing need for FDA regulation of tattoo ink」PMC(規制の必要性と顔料の安全性の概観) リンク
- [25]「Patterns of Reactions to Red Pigment Tattoo and Treatment Methods」Dermatol Ther 2016(赤色素への反応が最多。赤の組成にAl・Fe・Hg・Cd等を検出) リンク
- [26]「Mercury-Cadmium Sensitivity in Tattoos: A Photoallergic Reaction in Red Pigment」Annals of Internal Medicine(赤の硫化水銀・カドミウムによる光線過敏) リンク
- [27]University of Utah Health「Think Before You Ink: Tattoos and Adverse Skin Reactions」(皮膚反応の概観・色別の傾向) リンク
- [28]Dynamic Color「Safety Data Sheets (SDS) for Tattoo Ink」(製品ごとに個別SDSを公開) リンク※ メーカー公式。
- [29]Solid Ink「Product Info and MSDS」(色別の個別開示はなく一括MSDSのみ。CI一覧に 74160 / 74260 を含む) リンク※ メーカー公式。
- [30]医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第2条第3項・第4項。化粧品は「人の身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用」するもの、医療機器は「機械器具等」と定義され、皮内に注入する色材はどちらの定義にも収まらない リンク
- [31]製造物責任法(PL法)第2条第3項。製造物を「業として輸入した者」も「製造業者等」に含まれ、欠陥による損害の賠償責任を負う リンク
- [32]厚生労働省医政局医事課長通知「医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて」(令和5年7月3日 医政医発0703第5号・第4号)。眉・アイラインを描く行為は医行為に該当し、無免許で業として行えば医師法第17条違反と回答 リンク
- [33]World Famous Tattoo Ink 公式ブログ「You Have Limitless, What Now?」。EU のスタジオに対し「非 REACH 対応インクはすべてスタジオから処分するように」と案内 リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [34]Kuro Sumi 公式ブログ「You're Using Imperial, Now What?」。同趣旨の案内(製造元は World Famous と同じ Ink Projects) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。