タトゥーインクの安全性を、事実で見分ける
タトゥーインクは、もともと人体に入れるために作られたものばかりではありません。何が安全性の懸念になるのか、世界でいちばん厳しいとされるEUのREACH規制は何を制限しているのか、よく見る「REACH適合」という表示はどこまで信じてよいのか。 そして日本のようにインクの成分を規制する法律がない国で、受ける人とアーティストが自分で見分けるにはどうすればいいのか。販促ではなく、出典をつけて中立にまとめます。
4,000超
EU REACH エントリー75 が上限を設けた有害物質の数
8%
北欧当局の共同監視(211インク)で、表示が正しかった割合
7%
同じ検査で、新規則に完全適合していた割合
WHY IT MATTERS
なぜインクの
安全性が問題になるのか
タトゥーに使われてきた色素の多くは、もともと自動車塗料やプラスチック・繊維の染料など 「工業用」に作られた化学物質の転用でした。人体に長くとどまったときの安全性は、十分に検証されてこなかったのです。
皮膚バリアを破って注入する
針で真皮にインクを直接入れる侵襲的な行為。色素は注入部位に残りますが、溶けやすい成分は数時間〜数日で全身に回り、リンパ節や肝臓に移ることが知られています。
分解で別の物質が生じる
色素は日光やレーザー除去で分解し、より毒性の高い小さな化合物を出すことがあります。アゾ色素は、発がん性のある芳香族アミンを遊離しうるとされます。
化粧品より規制が遅れていた
肌に塗る化粧品には厳しい成分規制があったのに、より侵襲的なタトゥーインクは長く規制の外。この矛盾を正したのがEUのREACH規制でした。
出典:注入と全身移行・分解のしくみ[1][14]/化粧品との規制の非対称[2][15]。
INK SAFETY CENTER
テーマごとに、詳しくは各ページへ
REACH規制の解説 →
EU REACH エントリー75の上限値、「適合」表示の意味と限界、米国MoCRAとの違い。
SDSの読み方 →
SDS(安全データシート)の読み方と、文書と番号で確かめる検証手順。公開 SDS 8 本の読み比べ。
ブランド一覧 →
18ブランドの台帳。REACH対応の表示・SDS・公的な通報を根拠つきで。
顔料と色 →
色別の代表的な顔料(CI番号つき)と、アレルギーの傾向。
日本の現状 →
規制が無いとはどういうことか。法律ごとの整理、EU ラベル要件の読み方、PMU との違い。
確認リストと問い合わせ →
インクを選ぶときの確認リストと、供給者への照会メールのひな形。
更新履歴 →
このセンターの更新履歴。
BRAND LEDGER / ブランド台帳
ブランド名ではなく、
「ライン名」で見分ける
- IntenzeREACH対応と表示されるライン:GEN-Z(GEN-Z SINGLEZ を含む)・Black Label / Zuper Black / Pro Nouveau(PMU)/公的な通報:4 件/最終確認 2026-08-23
- Dynamic ColorREACH対応と表示されるライン:Platinum(カラー42色)・Union Black / Ganga Black / Blackout/公的な通報:12 件/最終確認 2026-08-23
- World Famous Tattoo InkREACH対応と表示されるライン:Limitless/公的な通報:14 件/最終確認 2026-08-23
- Kuro SumiREACH対応と表示されるライン:Imperial/公的な通報:4 件/最終確認 2026-08-23
- Perma BlendREACH対応と表示されるライン:LUXE/公的な通報:2 件/最終確認 2026-08-23
- Eternal InkREACH対応と表示されるライン:該当なし/公的な通報:2 件/最終確認 2026-08-23
- Solid InkREACH対応と表示されるライン:該当なし/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
- Radiant ColorsREACH対応と表示されるライン:該当なし/公的な通報:2 件/最終確認 2026-08-23
- REBEL Tattoo InkREACH対応と表示されるライン:REBEL Black(唯一の製品)/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
- EphemeralREACH対応と表示されるライン:欧州向け Ephemeral Ink/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
- Xtreme InksREACH対応と表示されるライン:REACH COMPLIANT FORMULA(RC / -EU 品番)/公的な通報:4 件/最終確認 2026-08-23
- Quantum Tattoo InkREACH対応と表示されるライン:Gold Label / Platinum(REACH 表記)/公的な通報:2 件/最終確認 2026-08-23
- Allegory InkREACH対応と表示されるライン:BLAK REACH COMPLIANT/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
- Panthera InkREACH対応と表示されるライン:Reach Conform UE Inks/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
- Fusion InkREACH対応と表示されるライン:該当なし/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
- Silverback InkREACH対応と表示されるライン:該当なし/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
- StarBrite ColorsREACH対応と表示されるライン:該当なし/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
- Electric InkREACH対応と表示されるライン:Easy Glow(Homologados REACH)/公的な通報:見つかっていない/最終確認 2026-08-23
MADE-TO-FADE
消えるインク(エフェメラル)の位置づけ
数年で薄くなる「消えるインク」も、欧州向けの製品はREACH適合・重金属不使用・ビーガン・単回使用滅菌と表示されています。黒は普通のタトゥーのようにカーボンブラックを使わず、有機色素を混ぜて黒く見せ、生分解性の殻で包む設計です。退色の目安は半年〜2年(個人差あり)。 成分のしくみと安全性は、別ページで図解しています。
CHECKLIST
インクを選ぶときの、確認リスト
確認リストの本文と、供給者への照会メールのひな形は、専用のページにまとめています。
FAQ
よくある質問
日本で売られているタトゥーインクは、安全性が保証されていますか?
いいえ。日本にはインクの成分を規制する法律がなく、針やマシンは薬機法上の医療機器に当たらないと厚生労働省が通知し、インクは化粧品・医療機器のどちらの定義にも入らないため、成分の事前審査や含有上限を課す仕組みがありません。海外で販売が禁止された旧型インクが流入する余地もあり、安全はアーティストやスタジオのリテラシー(見分ける力)に委ねられているのが実情です。
「REACH適合」と書いてあれば安全ですか?
REACH適合はメーカー自身による自己宣言で、中央機関による認証や公的な適合インク登録簿はありません。実際、独立した検査では『適合』表示でも禁止顔料や重金属が見つかった例が多数あります。ライン名・CI番号・SDS・第三者データベースで自分で確かめることが大切です。
どの成分が問題になりやすいのですか?
鉛・ヒ素・カドミウム・六価クロムなどの重金属、黒の製造で生じやすいPAH(多環芳香族炭化水素)、アゾ色素が皮内や日光で分解して生じる芳香族アミン、そして青・緑の基幹色だった Pigment Blue 15:3 / Pigment Green 7 などです。
ブランド名だけで選んでよいですか?
いいえ。同じブランドでも、米国向けや旧処方のラインは非適合のことが多くあります。EU向けの適合専用ライン名(例:Limitless/Imperial/Gen-Z/Apex/Viking by Dynamic/Radiant Evolved)と、製造が最新規制以降であることをバッチ番号で確認してください。
消えるタトゥー(エフェメラル)のインクはどうですか?
欧州向けの製品はREACH適合・重金属不使用・ビーガンと表示されています。黒は普通のタトゥーのようにカーボンブラック(すす)を使わず、色のついた有機色素を混ぜて黒く見せ、生分解性の殻で包む設計です。詳しくは「エフェメラルとは」のページで図解しています。
自分でもできる確認方法はありますか?
あります。販売元にSDSを求めて読む、ラベルのCI番号を見る、CTLやECHAのデータベースで照合する、SDSや適合宣言書を出せる正規ルートから買う。この4つだけでも、見分ける力は大きく上がります。
運営会社グループのスタジオ紹介
ここからは、当サイト運営会社(株式会社デルマト)のグループスタジオの紹介です。同一グループのため、中立の評価ではありません。
REACH対応インクでの施術を選べる国内スタジオ
成分まで確認して選びたい場合は、REACH規制への適合をメーカーが表明し、SDS(安全データシート)を公開しているインクを置くスタジオを選ぶ方法があります。東京のタトゥースタジオINKLYでは、黒は Dynamic の Union Black、カラーは Intenze の GEN-Z シリーズ(全色ではありません)での施術を希望できます。使用製品と衛生方針は同スタジオの使用機材ページで公開されています。
監修・更新情報
公開:2026.06.10 / 最終更新:2026.06.10
※ 本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、特定製品の安全性を保証・否定するものではありません。「REACH適合」はメーカーの自己宣言であり、適合状況・製品ラインは随時変わります。最終的な判断は、SDS・第三者検査・正規の流通元の情報にもとづいてご確認ください。
参考文献・出典
情報基準日 2026年6月8日。一次資料・査読論文・公的資料を優先し、メーカー/小売の表示には自己宣言である旨を付しています。
- [1]Commission Regulation (EU) 2020/2081(REACH附属書XVII エントリー75を新設。タトゥーインク・永久化粧の制限), EUR-Lex CELEX:32020R2081 リンク
- [2]ECHA「REACH restriction of hazardous substances in tattoo inks and permanent make-up」(エントリー75が4,000超の有害物質を制限) リンク
- [3]Moseman, Noble, Sanders, Guo, Swierk「Analysis of blue and green REACH compliant tattoo inks」Analyst 2024;149(21):5329-5335(DOI:10.1039/d4an00793j)。適合表示の青緑10検体中9検体が非適合・4検体に禁止物質 リンク
- [4]Nordic Council of Ministers『Joint Control of Tattoo Inks』TemaNord 2024:549。211インクで表示適合8%・完全適合7%※ 北欧当局の共同監視報告。
- [5]EU Safety Gate(旧RAPEX)警告 A12/01329/23(チェコ通報、2023)。Dynamic「Viking」ダークグリーンに鉛最大25%、市場回収※ 一次通報。二次情報では対象色の記載に食い違いがあるため一次情報を採用。
- [6]Swierk研究チームの米国先行調査(Chemistry World 2024 が報道)。9社54検体中45検体で成分とラベルが不一致※ 二次報道。
- [7]厚生労働省「タトゥー施術行為に使用されることが目的とされている機械器具について」(令和4年4月28日 薬生監麻発0428第1号)。タトゥー施術にのみ使う針及びマシン等は薬機法上の医療機器に該当しないと解する、との通知(インクは通知の対象に挙げられていない) リンク
- [8]最高裁判所第二小法廷 令和2年9月16日決定(平成30年(あ)1790号 医師法違反被告事件)。タトゥー施術は医師法第17条の「医行為」に当たらないとして検察側上告を棄却 リンク
- [9]ECHA CHEM「Substances in tattoo inks and permanent make up」(物質データベース) リンク
- [10]CTL GmbH Bielefeld「REACH-compliant tattoo & PMU database」(第三者試験所の検査データベース) リンク
- [11]「Occurrence and Regulatory Evaluation of Contaminants in Tattoo Inks」Cosmetics 2023, 10(5):141, MDPI(汚染物質と規制評価) リンク
- [12]「Heavy Metal Content in Tattoo and Permanent Makeup Inks and European Standards—Is There Still a Health Risk?」PMC(REACH施行後も限界値超過の製品が流通) リンク
- [13]「Toxic metals and carcinogens found in Australian tattoo inks」The BMJ(市販インクからの重金属・発がん物質の検出) リンク
- [14]IARC(国際がん研究機関)TATTOOING ナレッジベース(背景情報) リンク
- [15]EuPIA「Information Note: Tattoo Inks – Restriction under REACH」(表示要件・濃度上限の整理) リンク
- [16]Intenze「Understanding REACH Compliance in the Tattoo Industry」/Gen-Z(自己宣言の適合ライン) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [17]World Famous Tattoo Ink「Limitless」REACH Compliant Pigments リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [18]REBEL「MoCRA & REACH Compliance Tattoo Ink」(CTL検査・2023年1月のREACH認証取得と表示) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [19]Killer Ink「EU REACH Compliant Tattoo Ink」/Nordic Tattoo Supplies「REACH Database」(EU小売の適合カテゴリ集約) リンク※ 小売の集約。適合は各社の自己宣言にもとづく。
- [20]Ephemeral Tattoo「How Ephemeral Ink Works」「FAQ」(欧州向けはREACH適合・重金属不使用・ビーガンと表示) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [21]U.S. FDA「Tattoos & Permanent Makeup: Fact Sheet」。注入用に承認された色素はなく、未承認色素を使えばインクは不良品(adulterated)。工業用顔料の転用にも言及 リンク
- [22]U.S. FDA「FDA Issues Draft Guidance on Tattoo Inks」(MoCRAに基づく不衛生条件のドラフトガイダンス。当面は微生物汚染が主眼) リンク
- [23]「Recalls of tattoo and permanent makeup inks in the United States…」PMC。2003〜2023年に18件の汚染リコール、密封インク調査で49%が微生物汚染 リンク
- [24]「The pressing need for FDA regulation of tattoo ink」PMC(規制の必要性と顔料の安全性の概観) リンク
- [25]「Patterns of Reactions to Red Pigment Tattoo and Treatment Methods」Dermatol Ther 2016(赤色素への反応が最多。赤の組成にAl・Fe・Hg・Cd等を検出) リンク
- [26]「Mercury-Cadmium Sensitivity in Tattoos: A Photoallergic Reaction in Red Pigment」Annals of Internal Medicine(赤の硫化水銀・カドミウムによる光線過敏) リンク
- [27]University of Utah Health「Think Before You Ink: Tattoos and Adverse Skin Reactions」(皮膚反応の概観・色別の傾向) リンク
- [28]Dynamic Color「Safety Data Sheets (SDS) for Tattoo Ink」(製品ごとに個別SDSを公開) リンク※ メーカー公式。
- [29]Solid Ink「Product Info and MSDS」(色別の個別開示はなく一括MSDSのみ。CI一覧に 74160 / 74260 を含む) リンク※ メーカー公式。
- [30]医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第2条第3項・第4項。化粧品は「人の身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用」するもの、医療機器は「機械器具等」と定義され、皮内に注入する色材はどちらの定義にも収まらない リンク
- [31]製造物責任法(PL法)第2条第3項。製造物を「業として輸入した者」も「製造業者等」に含まれ、欠陥による損害の賠償責任を負う リンク
- [32]厚生労働省医政局医事課長通知「医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて」(令和5年7月3日 医政医発0703第5号・第4号)。眉・アイラインを描く行為は医行為に該当し、無免許で業として行えば医師法第17条違反と回答 リンク
- [33]World Famous Tattoo Ink 公式ブログ「You Have Limitless, What Now?」。EU のスタジオに対し「非 REACH 対応インクはすべてスタジオから処分するように」と案内 リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
- [34]Kuro Sumi 公式ブログ「You're Using Imperial, Now What?」。同趣旨の案内(製造元は World Famous と同じ Ink Projects) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。