INK SAFETY / インクの安全性医師監修

タトゥーインクの安全性を、事実で見分ける

タトゥーインクは、もともと人体に入れるために作られたものばかりではありません。何が安全性の懸念になるのか、世界でいちばん厳しいとされるEUのREACH規制は何を制限しているのか、よく見る「REACH適合」という表示はどこまで信じてよいのか。 そして日本のようにインクの成分を規制する法律がない国で、受ける人とアーティストが自分で見分けるにはどうすればいいのか。販促ではなく、出典をつけて中立にまとめます。

4,000

EU REACH エントリー75 が上限を設けた有害物質の数

8%

北欧当局の共同監視(211インク)で、表示が正しかった割合

7%

同じ検査で、新規則に完全適合していた割合

WHY IT MATTERS

なぜインクの
安全性が問題になるのか

タトゥーに使われてきた色素の多くは、もともと自動車塗料やプラスチック・繊維の染料など 「工業用」に作られた化学物質の転用でした。人体に長くとどまったときの安全性は、十分に検証されてこなかったのです。

皮膚バリアを破って注入する

針で真皮にインクを直接入れる侵襲的な行為。色素は注入部位に残りますが、溶けやすい成分は数時間〜数日で全身に回り、リンパ節や肝臓に移ることが知られています。

分解で別の物質が生じる

色素は日光やレーザー除去で分解し、より毒性の高い小さな化合物を出すことがあります。アゾ色素は、発がん性のある芳香族アミンを遊離しうるとされます。

化粧品より規制が遅れていた

肌に塗る化粧品には厳しい成分規制があったのに、より侵襲的なタトゥーインクは長く規制の外。この矛盾を正したのがEUのREACH規制でした。

出典:注入と全身移行・分解のしくみ[1][14]/化粧品との規制の非対称[2][15]。

EU REACH / エントリー75

世界でいちばん厳しいとされる、
EUのインク規制

EUは化学物質の枠組みであるREACH規則の附属書XVIIに「エントリー75」を新設し、 タトゥーインクと永久化粧(PMU)に使われる4,000を超える有害物質に濃度の上限を設けました。発がん性・変異原性・生殖毒性(CMR)に分類された物質を自動で取り込む方式で、化粧品で禁止された物質も参照します。

  1. 2020.12.14

    規則(EU)2020/2081 採択

    REACH附属書XVIIに「エントリー75」を新設。4,000を超える有害物質に上限を設定。

  2. 2022.01.04

    本則の適用開始

    重金属・PAH・芳香族アミン・CMR物質などの濃度上限と、ラベル表示の義務が発効。

  3. 2023.01.04

    青・緑の基幹色も適用

    Pigment Blue 15:3(CI 74160)と Pigment Green 7(CI 74260)に24か月の猶予を経て適用。事実上の使用禁止に。

青と緑の基幹色(Pigment Blue 15:3 / Pigment Green 7)の禁止は、紫・ピンク・茶など混色にも響き、従来パレットの65〜70%が影響を受けたとされます。出典:規則本文[1]/ECHA[2]。

LIMIT VALUES

何が、どこまで制限されているか

不純物として混ざりやすい重金属には、極めて低い上限が設けられました。数値は1kgあたりのミリグラム(mg/kg)。原典は重量%表記で、1% = 10,000 mg/kg です。

0.7 mg/kg

Lead (Pb)

神経発達への影響・血液毒性・発がん性

水銀

0.5 mg/kg

Mercury (Hg)

神経毒性・免疫毒性

ヒ素

0.5 mg/kg

Arsenic (As)

発がん性・全身毒性

カドミウム

0.5 mg/kg

Cadmium (Cd)

発がん性・腎機能障害

クロム(六価)

0.5 mg/kg

Chromium (VI)

強い発がん性・重いアレルギー

コバルト

0.5 mg/kg

Cobalt (Co)

強い皮膚感作性・発がん性懸念

アンチモン

0.5 mg/kg

Antimony (Sb)

呼吸器毒性・皮膚炎

スズ(有機スズ)

0.5 mg/kg

Tin (Sn)

消化器・神経系への影響

ニッケル

5 mg/kg

Nickel (Ni)

高頻度の接触皮膚炎・感作性

セレン

2 mg/kg

Selenium (Se)

高濃度で肝・腎毒性

250 mg/kg

Copper (Cu)

高用量で肝毒性

亜鉛

2,000 mg/kg

Zinc (Zn)

過剰摂取で代謝への影響

バリウム

500 mg/kg

Barium (Ba)

心血管系への影響・筋力低下

重金属以外の主な制限

ベンゾ[a]ピレン

0.005 mg/kg

代表的なPAH(多環芳香族炭化水素)。強い発がん性。

PAH(発がん性等に分類されるもの)

各0.5 mg/kg

黒の原料カーボンブラックの製造で生じやすい。

芳香族アミン(ベンジジン等)

各5 mg/kg

アゾ色素が皮内・日光で分解すると遊離しうる。

発がん性・変異原性物質(CMR 1A/1B/2)

0.5 mg/kg

CLP規則の調和分類を自動で取り込む。

皮膚感作性物質(区分1)

10 mg/kg

アレルギーを起こす物質。

メタノール(溶剤)

11%

溶剤としての上限。

※ 複数の分類に当てはまる物質は、最も低い上限が適用されます。数値の正本は重量%(原典)。出典:規則本文[1]/重金属の毒性整理[11][12]/オーストラリアの検出例[13]。

PIGMENTS BY COLOR

色ごとに、何の色素が使われているか

タトゥーの色は、色素(顔料)でできています。同じ「赤」でも、昔は硫化水銀やカドミウムのような重金属系、いまは有機顔料が主流、というように中身は移り変わってきました。代表的な顔料を、CI(カラーインデックス)番号つきで色別に整理します。

炭素・酸化鉄

カーボンブラック(CI 77266)/酸化鉄ブラック(CI 77499)

最も多用される色。カーボンブラックはPAH(多環芳香族炭化水素)の不純物管理が課題。

酸化鉄・有機アゾ

酸化鉄レッド(CI 77491)/ナフトールAS系アゾ/カルミン(CI 75470)

歴史的には辰砂(硫化水銀)やカドミウムレッドも。色別ではアレルギーが最も多い。

酸化鉄・有機アゾ

酸化鉄イエロー(CI 77492)/アゾイエロー

歴史的にカドミウムイエロー(硫化カドミウム)・クロムイエロー(鉛)。日光で過敏が出ることがある。

フタロシアニン(銅)ほか

フタロシアニンブルー Pigment Blue 15:3(CI 74160)/群青・コバルトブルー

PB15:3はEUで2023年1月以降は使用不可(禁止顔料)。

フタロシアニン(銅)・クロム

フタロシアニングリーン Pigment Green 7(CI 74260)/酸化クロム

PG7はEUで2023年1月以降は使用不可(禁止顔料)。

金属酸化物

二酸化チタン(CI 77891)/酸化亜鉛

混色の薄め用に広く使われる。レーザー照射で黒ずむ懸念が指摘される。

紫・橙・茶有機顔料・酸化鉄

キナクリドン/ジオキサジン紫/アゾ橙/酸化鉄ブラウン

多くは赤・青・黄の混色、または有機顔料でつくられる。

※ 実際の配合はメーカー・色ごとに異なり、複数の顔料を混ぜることが普通です。出典:色素の組成とCI番号[21][24]/カーボンブラックの不純物[14]。

ALLERGY & REACTIONS

色によって、危険度はちがう

アレルギーや皮膚の反応は、色(=中の色素)によって起こりやすさが変わります。とくに赤がいちばん多いことは、古くからくり返し報告されてきました。一般的な傾向をまとめます(個人差があり、必ず起こるわけではありません)。

色別で最も多い。歴史的には硫化水銀(辰砂)やカドミウムによる光線過敏・遅延型過敏。現代のアゾ/ナフトール赤でも、肉芽腫や接触皮膚炎の報告がある。

カドミウム由来の黄で、日光に当たると腫れ・かゆみが出る光線過敏が知られる。現代は有機顔料が主だが、反応の報告はある。

青・緑

中〜低

頻度は低いが、クロム・コバルト・フタロシアニンに対する遅延型の反応が報告されている。

アレルギー自体は比較的少ない。ただし最も多用されるため、感染やPAHなど量的なリスクは無視できない。なお『ブラックヘナ』のPPDは別物で、強い感作を起こす。

二酸化チタンは混色で広く使われ、反応を長引かせたり、レーザー照射で黒変する懸念が指摘される。

色を問わず気をつけたいこと

  • 反応は施術直後だけでなく、数週間〜数年後に出る「遅延型」もある。
  • 日光やレーザー除去で、かゆみ・腫れが悪化することがある。
  • 強いかゆみ・しこり・水ぶくれ・全身症状が出たら、皮膚科を受診する。

出典:赤色素への反応パターン[25]/硫化水銀・カドミウムの光線過敏[26]/皮膚反応の概観[27]。

WHAT "REACH COMPLIANT" MEANS

「REACH適合」は、
認証ではなく自己宣言

ここが、いちばん誤解されやすいところです。REACHには中央機関による「認証」や公的な適合インク登録簿はありません。 製造者・輸入者・販売者が自分の責任で基準を満たすと宣言する仕組みで、適合性は各国当局の抜き取り検査で事後的に確かめられます。だから「適合」表示と実際の中身が食い違う例が、くり返し報告されています。

査読論文(Swierkら 2024)

「REACH適合」とされる青・緑インク10検体を分析し、9検体が非適合、4検体から禁止顔料(Pigment Green 7 など)を検出。[3]

北欧当局の共同監視(2024)

64事業者の211インクを検査。表示が正しかったのは8%、新規則に完全適合は7%だった。[4]

EU Safety Gate 警告(2023)

Dynamic「Viking」のダークグリーンから鉛を重量比で最大25%検出。非適合として市場回収。[5]

米国での先行調査

9社54検体のうち45検体で、成分とラベル表示が一致しなかった。[6]

これは特定ブランドを否定するためではなく、「表示だけでは保証にならない」という前提を共有するためのものです。

JAPAN / 日本

日本は「法的空白」

日本にはタトゥーインクの成分を規制する法律がありません。2020年に最高裁がタトゥー施術は医行為に当たらないと判断し、2022年に厚生労働省は針・マシン・インクを薬機法上の医療機器ではなく「雑貨」として扱うと通知しました。つまり、人体注入を前提とした成分の事前審査や重金属の含有制限が、国の制度としては存在しません。

その結果、海外で販売が止められた旧型インクが流入する余地もあります。安全を守る最後の砦は、現場の見分ける力です。

出典:厚労省通知[7]/最高裁決定[8]。

USA / 米国 MoCRA

「MoCRA準拠」も保証ではない

米国では2022年のMoCRA(化粧品規制近代化法)でタトゥーインクの要件が強化されました。ただしその中身は主にFDAへの施設登録と製品リストの提出で、第三者による化学分析や市販前承認、公式な安全証明の発行を義務づけるものではありません。

だから「MoCRA準拠」の表示は、行政手続きを満たしたという意味であって、毒性学的な安全性を保証するものではない、という点に注意が必要です。立証責任をメーカーに移し、市販前に分析データを求めるEUのREACHとは考え方が異なります。

出典:MoCRAと規制の比較[11][15][22]。

FDA

注入用に承認された色素はゼロ

化粧品に使える色素はあっても、皮膚への注入を承認された色素は一つもない。未承認の色素を使えば、そのインクは法的に「不良品(adulterated)」とされる。

FDA

工業グレードの転用

多くの顔料は、そもそも皮膚に触れることを想定していない工業用。印刷インクや自動車塗料に使う色が、そのまま使われてきた。

FDA

最大の現実的リスクは汚染

2003〜2023年に18件のリコール(微生物汚染)。密封インクの調査では49%から細菌・真菌が検出された。FDAは当面この汚染対策を主眼に置くとみられる。

出典:FDAは注入用色素を承認していない・工業用顔料の転用[21]/微生物汚染のリコールと検査[23]/規制の必要性[24]。

HOW TO VERIFY

インクの安全性を、
自分で見分ける手順

「ビーガン」「オーガニック」「安全」といった言葉ではなく、文書と番号で確かめます。受ける人は施術前に、アーティストは仕入れのときに使えます。

01

SDSを読む

メーカーがバッチ別に出す安全データシートを取り寄せ、REACH附属書XVIIへの準拠表明・全成分・CMR物質の不含が書かれているかを見る。出せないメーカーの製品は安全要件を満たさないとみなす。

02

CI番号を点検する

ラベルのCI(カラーインデックス)番号を確認。CI 74160(Pigment Blue 15:3)と CI 74260(Pigment Green 7)は2023年1月以降EU不可。アゾ系の Orange 13・Yellow 14 なども不可。

03

第三者データベースで照合する

ドイツのCTL GmbH Bielefeld(タトゥー/PMUのREACH検査に特化した試験所)の公開DBや、ECHAの物質データベースでブランド名・色名・製品番号を照合する。

04

ラベルの必須表示を見る

「Mixture for use in tattoos or permanent make-up」の文言、バッチ番号、ニッケル/六価クロム含有時の警告文が入っているか。小さな容器は使用説明書に記載されることもある。

05

正規の流通から買う

SDSや適合宣言書を求めに応じて出せる正規ルートで仕入れる。偽造品や保管の悪い非正規ルートは、どんな判定法も意味をなさない。

出典:SDS・ラベル要件[1][15]/CI番号と禁止顔料[1][2]/第三者DB[9][10]。

ASK YOUR SUPPLIER / 供給者へ照会

「REACH対応ですか?」だけでは、
足りない

REACH エントリー75 は「ブランド」ではなく、一つひとつの混合物(製品・色・ロット)にかかる規制です。だから判断はブランド名ではなく、製品名・色名・ロット番号で固定して行います。下の4資料がそろって初めて「適合」に近づき、そろわなければ結論は保留にしておくのが安全です。

01

現行版のSDS

その品番・その色・そのラインに対応した最新版か。ブランド全色をまとめた古い汎用MSDSではなく、対象製品に紐づくものを求める。

02

REACH適合証明書(CoC/DoC)

本文に「REACH Annex XVII Entry 75 / Regulation (EU) 2020/2081」が明記されているか。ブランド名だけの『REACH対応』表示では証明にならない。

03

ロット別の試験報告書/CoA

そのロットについて、Appendix 13 物質・PAH・重金属・芳香族アミン・保存剤やホルムアルデヒド関連物質の確認ができるか。

04

ラベル写真

「Mixture for use in tattoos or permanent make-up」の文言・一意のバッチ番号・成分一覧が写っているか。ニッケルや六価クロムを含む場合はその表示も。

COPY & PASTE / 照会メールのひな形

件名:REACH Entry 75 適合資料のご提供のお願い

いつもお世話になっております。
下記の製品について、EU REACH Annex XVII Entry 75 / Commission Regulation (EU) 2020/2081 への適合を確認しております。

対象製品
 ブランド:
 製品名(ライン名):
 色名:
 容量:
 ロット番号:

恐れ入りますが、以下の資料をご提供ください。
1. 現行版のSDS
2. REACH適合証明書(CoC / Declaration of Conformity)
3. 当該ロットに対応する試験報告書またはCoA
4. ボトルのラベル写真(「Mixture for use in tattoos or permanent make-up」の文言・ロット番号・成分一覧が確認できるもの)

可能であれば、試験報告書がカバーする項目(Appendix 13 物質・PAH・重金属・芳香族アミン・保存剤関連)もあわせてご教示ください。
何卒よろしくお願いいたします。

この4資料の束がそろわないうちは、たとえブランドが有名でも調達判定は「保留」にとどめるのが安全側の運用です。 エントリー75 はロット(製造バッチ)単位で適合を求める規制なので、同じ製品でも入荷ロットが変わるたびに確認し直すのが原則です。 出典:REACH エントリー75・Regulation (EU) 2020/2081 とラベル要件[1][15]、第三者試験所のデータベース[10]。

READING AN SDS / 実例

SDSを一行ずつ読み解いてみる

実例として、ある「消えるインク(made-to-fade)」の黒のSDSを読み解きます。面白いのは、この黒に「黒い顔料(カーボンブラック)」が入っていないこと。赤や緑など色のついた有機色素を混ぜて、黒く見せています。

インクの土台になる溶媒。いちばん多くを占める成分です。

リコピン(CI 75125)

トマトやスイカを赤くする天然のカロテノイド色素。発色を担う赤の一つ。

レッド195(ソルベントレッド195)

発色を担う赤の有機色素。

グリセリン

うるおいを保つ保湿成分。化粧品や食品にも広く使われています。

グリーン3(D&C Green No.6)

緑の有機色素。米国で外用の医薬品・化粧品にも使われる色です。

イソプロピルアルコール(ごく少量)

製造・品質管理を助けるアルコール。引火しやすいのは容器・保管上の性質で、皮膚そのもののリスクではありません。

レッド23(ソルベントレッド23)

赤〜橙の有機色素(アゾ系)。

正直に読む①

重金属(鉛・水銀など)を主成分にしない設計。黒の正体は炭素のかたまりではなく、分解されやすい有機色素です。

正直に読む②

ごく少量のイソプロピルアルコールが「引火性」と分類されますが、これは容器・保管上の性質。皮膚に対する危険度ではありません。

正直に読む③

「軽度の皮膚刺激(区分3)」など弱い分類が付くことはあります。隠さず読み、強い分類(発がん性など)がないかをこそ確認します。

※ これは黒インクのSDSにもとづく内訳の一例で、配合は色(黒・赤・青)ごとに異なります。数値は幅をもたせた申告レンジで、実処方そのものではありません。出典:当該メーカー公式[20]。

BRANDS × LINES / 早見表

ブランド名ではなく、
「ライン名」で見分ける

同じブランドでも、米国向けや旧処方のラインは非適合のことが多くあります。適合をうたうのは特定の再配合サブラインに限られる、というのが基本です。国内で使われることの多いブランドを中心に整理します。

Solid Ink

自己宣言

適合ラインEU向け再配合ラインは確認できず

非適合標準(米国仕様)全般

色別の個別SDSは公開されておらず、一括のMSDSのみ。その成分表には EU禁止の CI 74160(青)/ CI 74260(緑)が含まれ、EUでは販売停止・非適合とされる。色別の組成は問い合わせが必要。2026年6月時点の公開情報の範囲では、公式サイトに REACH 適合宣言・CoC(適合証明書)・ロット別の試験成績書は見当たらず、ブランド全体を適合と扱うのは難しい(ロット番号と有効期限の表示はある)。

Dynamic

自己宣言

適合ラインViking by Dynamic/Union Black

非適合Dynamic BLK(原)・Platinum の一部・Triple Black

製品ごとに個別SDSを公開(Dynamic Black/Triple Black/Union Black 等)。Triple Black・原BLK はREACH非適合で、EUではタトゥー・PMU用途に使えない(「人体使用不可・練習用」の表記はEU販売店の商品ページ表示。Dynamic公式の単一声明として確認できたものではない)。Safety Gate で Viking のダークグリーンに鉛最大25%が出て回収。Swierk検査で Platinum の青・緑が非適合。2026年6月時点の公開情報の範囲では、公式が製品別SDSを公開し Platinum・Union Black を REACH適合と明示する一方、CoC(適合証明書)やロット別CoA、旧来カラーのREACH表示までは確認できず、ブランド全体ではなくライン単位で判断する必要がある。

Intenze

自己宣言

適合ラインGen-Z(ISO認証施設・ビーガン)/Black Label

非適合旧処方ライン

Gen-Z は適合専用として再配合。ただしSwierkの検査対象10検体には Gen-Z の青・灰も含まれ、非適合群に入った色があった。

Radiant

自己宣言

適合ラインRadiant Evolved

非適合オリジナル(米国仕様)

メーカーが2022年に旧ラインを非適合と告知。Evolved の Lyon Blue は単一バッチ(LOT 01)で回収連絡が出た例あり。2026年6月時点の公開情報の範囲では、メーカー公式サイトに現行Evolvedの公式SDS・CoCページは見当たらず、適合の主張は主に流通側(Nordic Tattoo Supplies の REACH Database、Barber DTS 等)に依拠しており、一次資料は流通側が先行している。

そのほかの適合専用ライン(自己宣言)

World Famous

Limitless

EU向け専用に組成を再設計と表示。FDA GMP・ISO 13485下で製造とメーカーが表示。

Kuro Sumi

Imperial

日本由来処方をEU REACH適合に再配合と表示。ISO 13485。

Eternal Ink

Apex

同社初のEU向けカラーライン。

REBEL

ブラック(CTL認証)

ドイツCTLに検体を送り、2023年1月に公式なREACH認証を取得・分析データを公開と表示。

Perma Blend(PMU)

LUXE

EU向けの永久化粧ライン。BVL登録表示。

Ephemeral(消えるインク)

欧州向け製品

欧州向けはREACH適合・重金属不使用・ビーガン・単回滅菌と表示。黒は有機色素を混ぜて作り、カーボンブラックを使わない。

このほか、EUの小売(Killer Ink・Nordic Tattoo Supplies など)が「EU REACH適合」枠で扱うブランドとして、I AM INK・Panthera・Carbon Black・Kwadron Inx・Xtreme・Raw・Quantum・Eclipse・Kokkai Sumi・Premier・KILLERBLACK・Unistar などがあります。

※ いずれもメーカー/販売者の自己宣言にもとづく整理で、公的認証ではありません(情報基準日 2026年6月8日)。製品の改廃・適合状況は随時変わり、同じブランドでも旧在庫は非適合のことがあります。なお、SDSの開示姿勢そのものも見分けの手がかりになります(例:Dynamicは製品ごとに個別SDSを公開、Solidは一括MSDSのみで色別は非開示)。出典:各社公式・EU小売の集約[16][17][18][19][20]、SDS開示[28][29]、独立検査の指摘[3][5]。

MADE-TO-FADE

消えるインク(エフェメラル)の位置づけ

数年で薄くなる「消えるインク」も、欧州向けの製品はREACH適合・重金属不使用・ビーガン・単回使用滅菌と表示されています。黒は普通のタトゥーのようにカーボンブラックを使わず、有機色素を混ぜて黒く見せ、生分解性の殻で包む設計です。退色の目安は半年〜2年(個人差あり)。 成分のしくみと安全性は、別ページで図解しています。

FAQ

よくある質問

日本で売られているタトゥーインクは、安全性が保証されていますか?

いいえ。日本にはインクの成分を規制する法律がなく、針やインクは法的には「雑貨」として扱われます。海外で販売が禁止された旧型インクが流入する余地もあり、安全はアーティストやスタジオのリテラシー(見分ける力)に委ねられているのが実情です。

「REACH適合」と書いてあれば安全ですか?

REACH適合はメーカー自身による自己宣言で、中央機関による認証や公的な適合インク登録簿はありません。実際、独立した検査では『適合』表示でも禁止顔料や重金属が見つかった例が多数あります。ライン名・CI番号・SDS・第三者データベースで自分で確かめることが大切です。

どの成分が問題になりやすいのですか?

鉛・ヒ素・カドミウム・六価クロムなどの重金属、黒の製造で生じやすいPAH(多環芳香族炭化水素)、アゾ色素が皮内や日光で分解して生じる芳香族アミン、そして青・緑の基幹色だった Pigment Blue 15:3 / Pigment Green 7 などです。

ブランド名だけで選んでよいですか?

いいえ。同じブランドでも、米国向けや旧処方のラインは非適合のことが多くあります。EU向けの適合専用ライン名(例:Limitless/Imperial/Gen-Z/Apex/Viking by Dynamic/Radiant Evolved)と、製造が最新規制以降であることをバッチ番号で確認してください。

消えるタトゥー(エフェメラル)のインクはどうですか?

欧州向けの製品はREACH適合・重金属不使用・ビーガンと表示されています。黒は普通のタトゥーのようにカーボンブラック(すす)を使わず、色のついた有機色素を混ぜて黒く見せ、生分解性の殻で包む設計です。詳しくは「エフェメラルとは」のページで図解しています。

自分でもできる確認方法はありますか?

あります。販売元にSDSを求めて読む、ラベルのCI番号を見る、CTLやECHAのデータベースで照合する、SDSや適合宣言書を出せる正規ルートから買う。この4つだけでも、見分ける力は大きく上がります。

CHECKLIST

インクを選ぶときの、確認リスト

  • 使うインクのブランド「ライン名」とバッチ番号を確認した
  • SDS(安全データシート)を取り寄せて読める状態にある
  • CI 74160 / CI 74260(青・緑の禁止顔料)が入っていないか確認した
  • 「REACH適合」は自己宣言で、公的認証ではないと理解している
  • 旧処方・米国向けの在庫を、EU適合品と混同していない
  • SDS・適合宣言書を出せる正規の流通から仕入れている

参考文献・出典

情報基準日 2026年6月8日。一次資料・査読論文・公的資料を優先し、メーカー/小売の表示には自己宣言である旨を付しています。

  1. [1]Commission Regulation (EU) 2020/2081(REACH附属書XVII エントリー75を新設。タトゥーインク・永久化粧の制限), EUR-Lex CELEX:32020R2081 リンク
  2. [2]ECHA「REACH restriction of hazardous substances in tattoo inks and permanent make-up」(エントリー75が4,000超の有害物質を制限) リンク
  3. [3]Moseman, Noble, Sanders, Guo, Swierk「Analysis of blue and green REACH compliant tattoo inks」Analyst 2024;149(21):5329-5335(DOI:10.1039/d4an00793j)。適合表示の青緑10検体中9検体が非適合・4検体に禁止物質 リンク
  4. [4]Nordic Council of Ministers『Joint Control of Tattoo Inks』TemaNord 2024:549。211インクで表示適合8%・完全適合7%※ 北欧当局の共同監視報告。
  5. [5]EU Safety Gate(旧RAPEX)警告 A12/01329/23(チェコ通報、2023)。Dynamic「Viking」ダークグリーンに鉛最大25%、市場回収※ 一次通報。二次情報では対象色の記載に食い違いがあるため一次情報を採用。
  6. [6]Swierk研究チームの米国先行調査(Chemistry World 2024 が報道)。9社54検体中45検体で成分とラベルが不一致※ 二次報道。
  7. [7]厚生労働省「タトゥー施術行為に使用される機械器具について」(令和4年 薬生監麻発第428001号)。針・マシン・インクは薬機法上の医療機器に該当しない(雑貨扱い) リンク
  8. [8]最高裁判所 令和2年9月16日決定(タトゥー施術と医師法第17条「医行為」)。施術は医行為に当たらないと確定 リンク
  9. [9]ECHA CHEM「Substances in tattoo inks and permanent make up」(物質データベース) リンク
  10. [10]CTL GmbH Bielefeld「REACH-compliant tattoo & PMU database」(第三者試験所の検査データベース) リンク
  11. [11]「Occurrence and Regulatory Evaluation of Contaminants in Tattoo Inks」Cosmetics 2023, 10(5):141, MDPI(汚染物質と規制評価) リンク
  12. [12]「Heavy Metal Content in Tattoo and Permanent Makeup Inks and European Standards—Is There Still a Health Risk?」PMC(REACH施行後も限界値超過の製品が流通) リンク
  13. [13]「Toxic metals and carcinogens found in Australian tattoo inks」The BMJ(市販インクからの重金属・発がん物質の検出) リンク
  14. [14]IARC(国際がん研究機関)TATTOOING ナレッジベース(背景情報) リンク
  15. [15]EuPIA「Information Note: Tattoo Inks – Restriction under REACH」(表示要件・濃度上限の整理) リンク
  16. [16]Intenze「Understanding REACH Compliance in the Tattoo Industry」/Gen-Z(自己宣言の適合ライン) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
  17. [17]World Famous Tattoo Ink「Limitless」REACH Compliant Pigments リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
  18. [18]REBEL「MoCRA & REACH Compliance Tattoo Ink」(CTL検査・2023年1月のREACH認証取得と表示) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
  19. [19]Killer Ink「EU REACH Compliant Tattoo Ink」/Nordic Tattoo Supplies「REACH Database」(EU小売の適合カテゴリ集約) リンク※ 小売の集約。適合は各社の自己宣言にもとづく。
  20. [20]Ephemeral Tattoo「How Ephemeral Ink Works」「FAQ」(欧州向けはREACH適合・重金属不使用・ビーガンと表示) リンク※ メーカー公式(販促表現を含む)。
  21. [21]U.S. FDA「Tattoos & Permanent Makeup: Fact Sheet」。注入用に承認された色素はなく、未承認色素を使えばインクは不良品(adulterated)。工業用顔料の転用にも言及 リンク
  22. [22]U.S. FDA「FDA Issues Draft Guidance on Tattoo Inks」(MoCRAに基づく不衛生条件のドラフトガイダンス。当面は微生物汚染が主眼) リンク
  23. [23]「Recalls of tattoo and permanent makeup inks in the United States…」PMC。2003〜2023年に18件の汚染リコール、密封インク調査で49%が微生物汚染 リンク
  24. [24]「The pressing need for FDA regulation of tattoo ink」PMC(規制の必要性と顔料の安全性の概観) リンク
  25. [25]「Patterns of Reactions to Red Pigment Tattoo and Treatment Methods」Dermatol Ther 2016(赤色素への反応が最多。赤の組成にAl・Fe・Hg・Cd等を検出) リンク
  26. [26]「Mercury-Cadmium Sensitivity in Tattoos: A Photoallergic Reaction in Red Pigment」Annals of Internal Medicine(赤の硫化水銀・カドミウムによる光線過敏) リンク
  27. [27]University of Utah Health「Think Before You Ink: Tattoos and Adverse Skin Reactions」(皮膚反応の概観・色別の傾向) リンク
  28. [28]Dynamic Color「Safety Data Sheets (SDS) for Tattoo Ink」(製品ごとに個別SDSを公開) リンク※ メーカー公式。
  29. [29]Solid Ink「Product Info and MSDS」(色別の個別開示はなく一括MSDSのみ。CI一覧に 74160 / 74260 を含む) リンク※ メーカー公式。

監修・更新情報

公開:2026.06.10 / 最終更新:2026.06.10

※ 本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、特定製品の安全性を保証・否定するものではありません。「REACH適合」はメーカーの自己宣言であり、適合状況・製品ラインは随時変わります。最終的な判断は、SDS・第三者検査・正規の流通元の情報にもとづいてご確認ください。