
「人気の作風」は何で測るかで答えが変わる
「いま人気のタトゥーの作風はどれか」。これから彫る作風を考えている人なら、一度は気になる問いです。ただ、この問いには、測り方によって違う答えが返ってきます。ネットでよく検索されている作風、彫りたいと相談される作風、見た目が魅力的だと評価される作風、実際に体に入っている作風。この4つは似ているようで、それぞれ別のものを測っています。
たとえば検索の多さは、見てみたい、意味を知りたいという関心でも増えます。一方で「魅力的だと思う」と「自分が入れる」も、同じ答えになるとは限りません。どの数字を見ているのかを知っておけば、ネットで見かける「人気ランキング」の見出しに振り回されずに済みます。
この記事では、まず Google トレンドの仕組みを見ます[1]。そのあと、英国・ポーランド・オーストラリア・日本で公開されている調査を順に紹介します[4,5,6,7]。それぞれの数字には、何を測ったものかを添えます。作風ごとの特徴は、当サイトのスタイル案内記事で詳しく紹介しています。
Google トレンドの数字は「検索の割合」を表す
Google トレンドは、Google 検索で実際に行われた検索の一部を標本として集め、匿名化・集計して示すツールです[1]。表示される値は、その地域・その期間の総検索数で割ったうえで、0〜100の範囲にそろえた相対値です[1]。たとえるなら「売上の金額」ではありません。「店全体の中でその商品が占めた割合」を、いちばん高い時点を100として表したようなものです。
そのため、指数が同じ2つの地域でも、検索の総数が同じとは限りません[1]。検索する人が少ない語は0と表示されます。短い時間に同じ人が繰り返した検索も数えられません[1]。また、指数は標本から計算するので、同じ語でも取得した日によって時系列が変わることがあります[3]。人気の低い語ほどばらつきが大きくなり、何回か取得した値を平均するとばらつきを抑えられると報告されています[3]。
BigQuery で提供される公開データセットもあります。こちらは約50か国を対象に、地域ごとの検索上位25語と急上昇25語を、直近5年分をさかのぼる日次データとして出すものです[8]。好きな作風名を指定して、世界の長期的な検索量を比べるためのデータではありません[8]。タトゥーの作風名のように限られた人が検索する語は、上位の一覧に出てこないこともあります。
検索が多い作風が、たくさん彫られているとは限らない
Google 自身が、Google トレンドは科学的な世論調査ではないと明記しています[1]。示しているのは検索への関心です。検索が急に増えたことが、その対象の人気を意味するわけではないともしています[1]。ある作風の名前がよく検索されていても、それは「どんな見た目か見てみたい」「意味を知りたい」という関心かもしれません。彫った人や予約の数を直接数えた数字ではありません。
研究の世界でも、この点には注意が向けられています。Google トレンドを使った社会科学の研究360件を調べた2025年のレビューがあります[2]。このレビューは、データの妥当性、信頼性、一般化のしやすさに課題があると述べています。さらに、対象となった研究の多くは、指標が本当に測りたいものを測れているかを検証していなかったと報告しています[2]。結果をほかの集団にも当てはめられるかを論じていない研究も多かったとしています[2]。
国どうしの比較にも、同じ注意が要ります。指数はそれぞれの国の総検索数を基準にそろえた値です[1]。そのため、A国が80、B国が40でも、A国で2倍の人が検索したとは言えません。まして、タトゥーを入れた人の数を国ごとに比べる材料にはなりません。検索の数字は、関心がどう動いたかを見る道具として使うのが向いています。
英国:彫りたい人が相談で希望した作風
作風の希望を直接尋ねたデータとしては、英国の Inkably が2020年に公表した集計があります[4]。公表前の6か月間に、タトゥーを入れようとして同社の専門家に相談した英国の人たちの回答をまとめたものです[4]。回答者は「数千人」とされています。正確な人数や選び方、回答率は公表されていません[4]。
希望する作風の内訳は、ブラック&グレーが26.74%、ブラックワークが12.50%、ジャパニーズが7.29%でした[4]。続いてトラディショナルが4.17%、ネオトラディショナルが2.08%、その他が8.68%です[4]。いちばん多かった答えは「希望の作風が分からない」で、38.54%を占めていました[4]。具体的な作風を挙げた人の中では、黒とグレーの濃淡で描くブラック&グレーが最も多かったことになります。
画像を見せて作風を当ててもらう設問では、提示した人気の作風を正しく言い当てられなかった人が63%いました[4]。作風の名前は知らなくても、彫りたい図柄のイメージは持って相談に来る人が多いことがうかがえます。なお、これは英国全体で入っているタトゥーの調査ではありません。施術を考えて同社に相談した人の希望を表す数字です[4]。

ポーランド・ヴロツワフ:見た目の魅力を点数で評価
ポーランドのヴロツワフでは、住民160人に作風の魅力を評価してもらった2024年の学位論文調査があります(著者:Julia Mizdal氏)[5]。2023年第4四半期に行われたオンライン調査です。回答者は女性110人、男性50人で、年齢は18〜73歳でした[5]。タトゥーがある人は64人、ない人は96人で、タトゥーのない人のほうが多い集団です[5]。
回答者は、9種類の作風を示す画像を見て魅力を1〜7点で評価しました。評価は「他人の体にある場合」と「自分の体にある場合」の2つの条件で行われました[5]。著者は、性別、年齢、学歴、本人のタトゥーの有無にかかわらず、ミニマリストとレタリングが全体として最も魅力的に評価されたと記しています[5]。シンプルなデザインや文字のデザインが、タトゥーのない人も含めて好まれやすかったという結果です。
ただし、これは1つの都市に住む160人へのオンライン調査です[5]。ポーランド全体の傾向や、実際に彫られた作風の内訳を示すものではありません[5]。「見て魅力を感じる」と「自分の肌に入れる」は別の問いです。この学位論文調査は、前者を細かく測ったデータとして見ておくとよいでしょう。

オーストラリアと日本:実際に入れた人のデータ
実際に入れたタトゥーを尋ねた調査として、オーストラリアの McCrindle Research が2016年2月に行った全国調査があります[6]。国全体の傾向に近づくように回答者を集めた1,011人の調査で、タトゥーがある人は19%でした[6]。タトゥーがある人の直近の1つは、絵や図が51%、主にシンボルが21%、文字やフレーズが19%、その他が9%でした[6]。
この調査が分類したのは「何を描いたか」という図柄の種類です[6]。ブラックワーク、トラディショナル、ファインラインのような、彫り方や表現のスタイルごとには尋ねていません[6]。同じ花の絵でも、ブラックワークで彫るか、細い線のファインラインで彫るかで仕上がりは大きく変わります。図柄と作風は別の軸なので、この数字から作風の人気を言うことはできません。
日本では、20〜50代の6,438人にタトゥーの有無を尋ね、あると答えた人に追加調査をした研究があります[7]。この研究全体の参加者は174人で、オンライン調査を最後まで終えた84人に加え、著者の知人を通じて集めた90人を含みます[7]。オンライン調査を終えた84人の内訳は、男性57人、女性27人でした。伝統的な和彫りの人が11人、西洋式のタトゥーの人が73人です[7]。研究の目的は和彫りと西洋式の比較で、さまざまな作風から好みを選んでもらう調査ではありません[7]。そのため、日本全体で多い作風を示す数字としては使えません[7]。
調査の数字を、自分の作風選びに生かすには
ここまで見てきた調査は、それぞれ測っているものが違います。英国は相談者の希望[4]、ヴロツワフは画像を見たときの魅力度[5]、オーストラリアは直近のタトゥーの図柄[6]を測っています。これらを足し合わせて「世界の人気作風ランキング」をつくることはできません。それでも、作風を選ぶときに役立つ手がかりは、それぞれの数字から読み取れます。
1つ目の手がかりは、作風の名前で迷う人がとても多いことです。英国の相談者では「希望の作風が分からない」が38.54%、画像で作風を当てられなかった人が63%でした[4]。名前が分からなくても、心配はいりません。好きなデザインの写真やイメージがあれば、それが何よりの手がかりになります。2つ目は、ミニマリストやレタリングのようなシンプルなデザインが、タトゥーのない人からも魅力的と評価されやすかったことです[5]。
検索で話題になっている作風が、自分の肌や暮らしに合うとは限りません。作風ごとの特徴や見た目の違いは、当サイトのスタイル案内記事(tattoo-style-zukan-hub)で紹介しています。気になる作風が見つかったら、その画像を手元に用意して、予約時にご相談ください。
よくある質問
- Q. Google トレンドで検索が多い作風は、実際にたくさん彫られている作風ですか?
- そうとは限りません。Google 自身が、Google トレンドは科学的な世論調査ではなく検索への関心を示すもので、検索の急増が人気を意味するわけではないと説明しています。彫った人の数や予約数を数えた数字ではありません。
- Q. 国ごとの Google トレンドの数値を比べれば、どの国でタトゥーが多いか分かりますか?
- 比べられません。数値は各地域・各期間の総検索数をもとに0〜100にそろえた相対値です。同じ数値でも、検索の総数は同じとは限りません。
- Q. 作風の好みを直接尋ねた調査はありますか?
- 英国の Inkably が公表した、施術前の相談者の希望作風の集計があります。ブラック&グレーが26.74%、ブラックワークが12.50%で、「希望の作風が分からない」が38.54%でした。ポーランド・ヴロツワフの住民160人の研究では、ミニマリストとレタリングが最も魅力的と評価されました。
- Q. 作風の名前が分からなくても相談できますか?
- できます。英国の相談者の集計でも、画像で作風を正しく言い当てられなかった人が63%いました。好きなデザインの画像を用意して、予約時にご相談ください。
References
- [1]Google. FAQ about Google Trends data. Google Trends Help, n.d.. https://support.google.com/trends/answer/4365533?hl=en-GB
- [2]Johanna Hölzl, Florian Keusch, Christoph Sajons. The (mis)use of Google Trends data in the social sciences: A systematic review, critique, and recommendations. Social Science Research, 2025. doi:10.1016/j.ssresearch.2024.103099
- [3]Eduardo Cebrián, Josep Domenech. Addressing Google Trends inconsistencies. Technological Forecasting and Social Change, 2024. doi:10.1016/j.techfore.2024.123318
- [4]Inkably Inc.. We asked thousands of Brits about the tattoos they want to get, here are the results. Pressat / Inkably Inc., 2020. https://pressat.co.uk/releases/we-asked-thousands-of-brits-about-the-tattoos-they-want-to-get-here-are-the-results-4ac3bfcf9967958337a7f42d088fb9bc/
- [5]Julia Mizdal. Atrakcyjność stylów tatuaży w ocenie mieszkańców Wrocławia / Attractiveness of tattoo styles in the opinion of inhabitants of Wrocław. Wrocław University of Environmental and Life Sciences / FAO AGRIS, 2024. https://agris.fao.org/search/fr/records/68b6deb168d9e6806700b44d
- [6]McCrindle Research. Tattoos in Australia: Social Analysis. McCrindle Research, 2016. https://mccrindle.com.au/app/uploads/2018/03/Most-recent-Tattoos-in-Australia-report.pdf
- [7]Takashi Suzuki, Takao Okubo. An Empirical Study of the Actual Conditions, Current Attitudes, and Psychological Outcomes of Tattooing Among Japanese People. Japanese Psychological Research, 2026. doi:10.1111/jpr.12584
- [8]Google. Get started with the Google Trends dataset. Google Trends Help, n.d.. https://support.google.com/trends/answer/12764470?hl=en-au
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